( English )

"Touch the Invisibles" 

小型振動装置と泡から構成された、情報世界と現実世界をつなぐ実験的インタフェース。

ディスプレイ画面には、小さな人型をした情報生命の影が歩き回り、彼らの関係が泡のように映し出されています。操作者が彼らを指でなぞると、指先に装着した振動装置により、指腹に触った感覚が返ってきます。 Touch the Invisiblesの世界では、ディスプレイ画面の中、本来触れる事のできないものに触ることができます。

また、彼らに触ると筐体内部に泡が発生して、情報世界の変化が現実世界の視覚的な変化としても現れます。筐体のなかの泡は、情報世界の履歴を自然の泡を使って視覚化した“Bubble-log”です。

 

Nail-mounted Tactile Interface

私たちは、物体表面の状態を指の動きによって知ることができます。
指の動きによって指腹の状態が変化し、それが物体表面の情報として認識されます。しかし、下図右のように、指が動いている最中に、爪側から振動が加えられると、その振動は、あたかも、指腹側が振動している、つまり、物体表面がでこぼこしているように錯覚してしまいます。


Ando, Miki, Inami, Maeda, SmartFinger: "Nail-Mounted Tactile Display"
Emerging Technologies SIGGRAPH 2002

振動子(ボイスコイル)を両面テープで爪の上に取り付けます。指の位置は、液晶パネルによって計測されていて、その位置と映像の関係によって振動が与えられます。そうすることで、様々な映像に対して、触覚フィードバックを加えることができます。

例えば、画面の黒い部分が凸になっているように感じることができます。このような、触覚フィードバックは、新しいインタフェースやゲームに使用することができます。

 

 

Bubble-log

記録・履歴(Log)は、自然の中では足跡や獣道等、一種の造形物として残される。これらは、正確な情報を表すものではないが、その行為の痕跡や造形物としての美しさは、私たちの心に訴える力を持ちます。
一方、デジタル世界のログは、コンピュータ内で正確な情報として保存され、グラフ、や文字の羅列として表現されます。

現在の人間とデジタル世界の深い関わりを考えたとき、デジタル世界の操作を、デジタルな表現によってではなく、より私たちの心を動かす自然なものとして残す必要があるのではないでしょうか。そこで、私たちは、"Bubble-log" という手法で、デジタル世界の変化を、自然界の造形物として表すことを試みました。

私たちは、デジタル世界の操作を自然の痕跡として残す方法として、泡という可塑性を持った素材を選びました。泡は、空気を送り込むたびに、その場所に少しずつ堆積する。これを繰りかえすことで、デジタル世界で行われた行為の記録を、立体物として視覚化することができます。

例えば、堆積された泡の偏りによって、ある画面の中での情報操作の偏りを表すこともできる。それは正確な情報と呼べる物でなくとも、行為の傾向や雰囲気、その履歴を、より直感的に理解する多層な記録となりうるのではないでしょうか。

同じ種子から生まれた苗からでも同じ形の木が生えないように、多層な情報を含む"Bubble-Log"のインターフェースでは、たとえ同じデジタル情報を入力したとしても異なる造形物が生まれてきます。それは環境がもつ私たちには見る事ができない複合的な情報までもが可視化された、フィジカルな情報の姿と言えるかもしれません。

 

 

 

History

2009 2/4-15 平成20年度(第12回) 文化庁メディア芸術祭
               (アート部門 優秀賞受賞)
2009 8/3-7 SIGGRAPH2009 Information Aesthetics Showcase 2009 8/28-30
グッドデザイン・エキスポ 2009

2009 10/30-11/3 DESIGNTIDE TOKYO 2009

 

プレスキット (PDFdocument and photos)

Junji Watanabe (JPN)

  1976年生まれ。2000年 東京大学工学部 計数工学科 卒業。2005年 東京大学大学院 情報理工学系研究科 博士課程修了。博士(情報理工学)。人間の知覚メカニズムの研究を行うとともに、インタフェース・芸術表現への応用研究を行う。人間の感覚と環境との関係性を理論と応用の両面から研究している。 

Eisuke Kusachi (JPN)

  1978年生まれ。多摩美術大学大学院修了。インタフェースデザインの立場から、メディアアート作品の制作に携わっている。 Ars Electronicaや文化庁メディア芸術祭などで作品展示を行う。平成20年度(第12回)文化庁メディア芸術祭 アート部門 優秀賞受賞。

NOSIGNER

  「見えない物をつくる職業」という意味をもつNOSIGNER(ノザイナー)として匿名で活動する、領域を持たないデザイナー。
空間/プロダクト/アートディレクション等の様々なデザイン分野で世界的な評価を得ている。

主な受賞歴として、PENTAWARDS PLATINUM(食品パッケージデザイン部門最高賞)NYADC Young Guns 7iF賞、グッドデザイン賞など受賞多数。

http://www.nosigner.com/

Hideyuki Ando (JPN)

  1974年生まれ。1999年 愛知工業大学大学院 工学系研究科 修士課程修了。2000年 理化学研究所BMC JRA配属。2001年 科学技術振興事業団「協調と制御」領域グループメンバーとして東大情報学環研究員、2002年よりNTTコミュニケーション科学基礎研究所 リサーチアソシエイト、2007年同研究所リサーチスペシャリストを経て現在、大阪大学大学院情報科学研究科准教授。博士(情報理工学)。感覚・知覚・運動インタフェース、バーチャル・リアリティなどの研究に従事。

 

(c) Junji Watanabe, Eisuke Kusachi, NOSIGNER, Hideyuki Ando 2009

All photographs of the interface and title photo (c) Hatta

watanabe@avg.brl.ntt.co.jp