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このビデオを見るときはヘッドフォンもしくはイヤフォンを
使用していただくと効果的です.
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「心音移入」

人間は、指紋や声や皮膚の色など自分の属性であっても、通常その属性を特に気にせず生きています。属性の中でも内臓といった身体の内側のことには、より無頓着です。考えようによっては、それらを気にしないからこそ上手く生きていけると言えます。しかし時には、その内臓が発する音によって、普段は意識しない存在に気がつくことがあります。例えば、空腹のときに鳴るお腹の音は胃や腸の存在を、緊張している時に聞こえてくる鼓動は心臓の存在を知らしめます。この時、聞こえてくる空腹音や心音は、紛れも無く自分固有のもののはずですが、現実には私たちは、それを特定する能力は持ちえていません。一般に、属性というのは、その人特有のものと解釈されますが、この作品は、属性の中にはアノニマス(誰のものでもない)な、共有できる性質を持つものがあるということを示しています。

聴診器を自分の胸にあて、ヘッドフォンを通じて自分の心音を聞きます。そのとき、目の前には、緊張している人の映像が流れます。映像に合わせて音の強弱が調整されていくなかで、だんだん、その音が自分の心音なのか、映像の中の人の心音なのか区別がつかなくなってきます。心音という個人にとって重要な属性が共有されることは、それを通じて、他人の緊張感だったり、心の動きを想像をすることにつがなります。

Prix Ars Electronica 2011 Interactive Art division Honorary Mentions
empathetic heartbeat Hideyuki Ando, Junji Watanabe, Masahiko Sato 

Ars Electronica Cyber Art 2011, Interactive Art, pp. 182-183, 2011. Sept.

展覧会単行本
「属性」 佐藤雅彦 著(求龍堂 2010) pp. 20-23.

2010年7月16日〜11月3日 21_21 DESIGN SIGHT
佐藤雅彦ディレクション “これも自分と認めざるをえない”展
にて制作・展示されました。

映像協力:関口台町小学校、東京外国語大学剣道部、近藤大祐

(c) Hideyuki Ando + Junji Watanabe + Masahiko Sato